ハンコに“朱肉”を使う理由は、長期保存に向いているからです。
銀行印などの印鑑を押す時には、丸い容器に入った赤い朱肉を使う方がほとんどでしょう。一般的に広く使われているのは、朱液をパッドに染み込ませたスポンジ朱肉(モルト朱肉)です。速乾性の物や捺印マットと一体化した物など、事務作業に便利な商品がいろいろ販売されています。黒色のものもあります。
朱液にモグサなどの繊維質を混ぜた、昔ながらの練り朱肉(印泥)もあります。書道作品に落款を押す方は、こちらも見慣れているでしょう。現在製造されている練り朱肉の原材料には、水銀などの有害な成分は含まれていません。
一方、主に長方形の容器に入った“スタンプ台”という商品もあります。朱肉と似ていますがインクの成分が違い、ゴム印などを押すのに適しています。なお、ゴム印には朱肉を使用しないでください。溶剤の油分でゴムが溶けてしまいます。
朱肉とスタンプ台の違いは、「長期保存性」と「にじみの有無」です。朱肉はにじみが無く、時間が経っても変色しにくいので、契約書類などに押す印鑑に向いているのです。
印鑑を押した時に薄くなってきたと思ったら、補充しましょう。朱肉もスタンプ台もメーカーごとに成分が全く違いますから、必ずメーカーと商品名を確かめて、専用の朱液や補充インクを使用してください。印鑑ケースの中に付いている小さい朱肉がダメになった場合も、キタジの店頭へお持ちください。新しい朱肉と交換できます。
新商品 ヒシエム練朱肉-irodori-
朱肉の歴史
印鑑は朱肉で押すもの。いつからこのような常識が定着したのでしょうか?
そもそも、朱肉は中国が起源だと言われ最初は泥を用いていたと伝えられてます。
日本では鎌倉時代から朱肉が広まり、この時の素材が自然界に存在する「辰砂」と言う鉱物(※硫化水銀で出来ている。現在は使われていません。)から作られていました。その時の色が現在まで好まれている朱色に近かったのではないしょうか。又、朱色は神聖なものとして扱われ、魔除けの効果があると信じられたこと。硫化水銀を含んだ顔料である為、長期保存出来る色であったこと。ここにも朱色が選ばれた理由があるわけなんですね。
更に歴史的背景にも朱色が選ばれた理由があるようです。
その昔、朱色で押した印を「朱印」、朱肉ではなく墨で押した印を「黒印」と言いい「朱印」は公文書、「黒印」は私的な文書と区別して使用されていたようです。朱色と決まっていた訳ではありませんでした。
「黒印」は「朱印」より格下の印と格付けされ、簡略化された手続きの際に使われてました。平安時代から使用されていた「黒印」ですが戦国時代になると、さらに盛んに使われるようになりました。
元々、文書には「花押」(氏名などを崩して図案化したサインのようなもの)を記すことが主流だったのですが戦国大名のあいだで文書にハンコを押すことが流行り、大名たちは、自分の家の権威を示す為に「黒印」と差別化して「朱印」を押すようになりハンコ文化が発展していきました。外国との貿易を行った“朱印船”というものを日本史の授業で習った方も多いと思いますが、これはまさに“朱印を押した貿易許可証”を持っている船、という意味です。
このように戦国時代でのハンコの形態や使用法の発展が今日のハンコ文化に大きく影響しているのかもしれません。
ちなみに江戸時代の庶民は幕府によって「朱印」を使うことを禁じられており、「黒印」のみの使用が許されていました。庶民が「朱印」の使用を許されたのは、1868年(明治元年)9月のことでした。
朱肉が服に付いてしまったら
うっかり朱肉をワイシャツの袖に付けて汚れてしまった! というような場合の落とし方をご紹介します。まず、水やぬるま湯だけでは布に付いた朱肉はほとんど落ちません。一般的な洗濯用洗剤や酸素系漂白剤でも残ります。完全に消すには、洗濯用の固形石けんをネットに入れて、根気よくこすり洗いをしてください。
印鑑に付いた朱肉の掃除の仕方は、以下を参考にしてください。
はんこのキタジは、明治8 年(1876年)に創業した、金沢・広坂通りのしにせ印章店です。
社名:株式会社 キタジ
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