記念スタンプ

観光地などに設置されている来場記念スタンプを押してみたことはありますか?
写真や動画とは一味違う旅の思い出として、なかなか楽しいものです。最近ではデジタルのスタンプラリーもありますが、ここでは昔ながらのゴム印の記念スタンプについて。

実印・銀行印といった普通のハンコは基本的に文字のみ(銀行によっては絵入りも認めてくれるようです。)なのに対し、記念スタンプは絵柄がメインです。当社では、依頼主からスタンプに入れたい物の写真を預かって作成することがよくあります。写真からそのままスタンプができれば楽なのですが、そう簡単にはいかないのです。

ゴム印を含むハンコは、色が付く凸の部分と白く残る凹の部分で全ての絵柄を表現する必要があります。例えば黒のインクで押す場合、100%黒と100%白のみで中間のグレーは使えません。フォトレタッチソフトを使えばカラー写真を無理矢理、白黒2色に変換することもできますが、ほとんどの写真は、元の被写体の輪郭が分からなくなってしまいます。

そこで、写真を下敷きにしてゴム印用の輪郭を手作業(と言ってもパソコン上ですが)で描いています。ゴム印は型に溶かしたゴムを流し込んで物理的に凸凹を作るため、表現できる絵や線の細かさには限界があります。対象のどこを省略し、どこを描くか、どこを塗りつぶし、どこを空白として残すかが腕の見せ所。線と色の選択次第で、同じモチーフでも全く違う印象に仕上がります。

金沢城に設置してある記念スタンプでは、海鼠壁なまこべいの表現をぜひ押して実際の建物とも比べてみてください。石川門など金沢城の特徴でもある白い漆喰の海鼠壁と、唯一黒い漆喰を使用している鼠多門の海鼠壁では、白黒が反転しているはずです。

金沢城 鼠多門